番組審議会
番組審議会とは、南海放送が放送する番組の向上改善と適正を図るため、放送番組等の審議を行うことを目的として設置された審議機関です。
第708回 番組審議会
第708回番組審議会が、10月23日(月)、本社8階役員会議室で開かれました。
7名の委員より、テレビ、ラジオそれぞれの合評番組について審議が行われ、テレビ番組では南海放送が制作した「へそ太郎おじさん~幸せつなぐ芸の達人」について、委員から次のような意見が出されました。
テレビ番組へそ太郎おじさん~幸せつなぐ芸の達人
放送日時:2023年7月31日(土)10:25~10:55(南海放送制作)
番組概略
愛媛県大洲市。ここに昭和から続く人形劇団があります。大洲人形劇サークル「へそ太郎」。1977年に発足し、これまで700回以上の公演を行ってきました。会員は8名いますが、仕事などで全員揃うことはありません。セットや人形は手作り。何十年も使っている人形はボロボロです。要望があると軽トラに荷物をのせて出発。年10~20回の公演をボランティアで実施しています。お客さんは大半が子どもたち。現代の子供たちに人形劇?という疑問もあるでしょう。しかし、これが大ウケ、子供たちに大盛り上がりの人形劇なんです。
その中心が「へそ太郎」代表の玉井義幸さん(69歳)。普段は家業の石材店で働いていますがとても芸達者。人形劇の合間に行う腹話術では相棒の「きよしくん」と、下ネタも交えた漫才のようなやりとりで子供たちを爆笑の渦に巻き込みます。また、玉井さんオリジナルの"かかし踊り"は地元イベントで引っ張りだこ。地元に伝わる"かかし踊り"はゆったりした動きですが、玉井さんのは飛んだり跳ねたり、奇天烈な動きが5分間続き、見る人を困惑させるほどのパフォーマンスです。終わった後は息が絶え絶えで、命の危険も案じられるほど。最近は玉井さんに増して人が良い長男が跡を継ごうとやり始めました。でも動きの激しさはまだまだ69歳の親父にはかないません。そんな人形劇に腹話術、かかし踊りと玉井さんの生き様には昭和が流れています。
これらの芸はすべてボランティア。そこには子どもの頃の思いが原点となっています。玉井さんが言うには、小さい頃から物覚えが悪く学校の授業にはついていけず、成績は1ばかり。友達とも遊ばす、家の畑で鍬を持って一人で遊んでいました。とにかく学校が嫌いだったそうです。中学を卒業後は進学せず、そのまま実家の石材業へ。人との交流が少ない青春時代でした。そんな人生を送ったからこそ、今は人を楽しませたい、役に立ちたいという思いが強く、人形劇などを通じて人を思いやる大切さを伝えようとしています。
各委員の意見
- 昨今、ウクライナ侵攻やイスラエル情勢だと、平和な日本にいても何か不安感を覚えるこの頃だが、そういった雰囲気を一瞬でも忘れさせてくれる番組で、こういった素晴らしい人や、素晴らしい活動をいっぱい発掘して、これからもどんどん放送して頂きたい。
- 番組全体としては、後半で玉井さんの息子さんが本当に息子らしいなと感じられたこと、玉井さんが役者として表現する時とオフの表情のハレーションが印象深く、玉井さん自身から出てくるエネルギーが全然違うところがとても魅力的で、番組構成のねらいと合っていた。
- 若い頃にどこで何を思ってこういう活動を始め、外国へ行ってパフォーマンスを披露するなど、とても積極的な玉井さんが出来上がったのか、どこで変わったのかにすごく興味がわいたので、そういったことをもう少し深掘りしてもらえると良かったなと感じた。
- 主人公の玉井さんの表情を、カメラが余すところなく捉えており、人を和ませるほどの笑顔にあふれながら、ウクライナ侵攻に対する困惑を浮かび上がらせる顔の皺、あるいは自身の子どもの成長を見つめる真剣な眼差しなど、意図を持って撮影している事、また正面だけでなく、横からのカットもアクセントとなって飾り気のない人柄が画面からにじみ出ており、強い印象を受けた。
- 「芸達者」という昭和の言葉を久々に思い出し、ゲームや動画が普通に楽しめ、子どもたちもあふれるコンテンツに隠れてしまいそうになる今日、これほど子どもたちが夢中になれるものを提供できる玉井さんには感服した。そして今一度、大人の役割というものも考えさせらる番組だった。
- 子どもたちの表情がとても素晴らしかった。最初は令和の子どもが人形劇を喜ぶとは到底思えなかったが、時には息を呑んだり、笑い転げたり、興奮を抑え切れない様子が臨場感たっぷりに映し出され、番組を見ていて、私は人形劇に参加しているわけでもないのに「子どもたちが喜んでくれた」という不思議な達成感を感じた。
続いてラジオ番組では、南海放送制作の「歌のない歌謡曲」の合評を行いました。委員の主な意見と感想は次のとおりです。
ラジオ番組歌のない歌謡曲
放送日時:2023年9月22日(金)7:00~7:15 9月29日(金)7:00~7:15(最終回)(南海放送制作)
番組概略
このほど南海放送は開局70年を迎えましたが、開局した1953年以来放送を続けてきたのが『歌のない歌謡曲』です。南海放送ラジオの最長寿番組が、今年9月末をもって終了しました。パナソニック(番組開始当時は、松下電器、その後、ナショナル)の提供のもと、全国37局がそれぞれ各社で制作するスタイルで、朝の慌ただしい時間に流れる心地よいインストゥルメンタルで多くのリスナーを癒してきました。また、年に一度、全国37局が内容を競い合うコンクールも開催され、当社は1999年に最高賞となる金賞を受賞するなど何度も入賞し、昨年も全体4位の秀作賞を受賞しました。
この歴史ある番組をアンカーとして、今年1月から担当したのが、入社2年目の松友杏樹アナウンサーです。選曲・コメント内容・編集等すべてをこなしてきました。番組の構成は、インストゥルメンタルの曲をお送りしながら、その日の朝ワイド番組を担当するアナウンサーが当日の気象情報を生コメント。そしてパナソニックの生CMを挟みながら、その日の暦などを織り交ぜたフリートークを展開します。松友アナウンサー自身のエピソードを含む優しい語り口のトークは好評であったと、番組に寄せられたメールからも伝わってきます。
今回は、9月22日(金)放送回と9月29日(金)最終回をお聞きいただきます。9月22日(金)は、歴代担当アナウンサーのうち最長の33年3か月間担当した戒田節子さんがゲスト出演。戒田さんは、結婚・出産の時期を含めて担当期間中一度も放送を休みませんでした。9月29日(金)は、番組開始前のCM、番組内の生CM、番組終了後のCMを含めてご試聴いただきたいと存じます。70年以上にわたって番組提供を続けてきたパナソニックの思いも伝わってくる内容です。
各委員の意見
- インストゥルメンタルが醸し出す雰囲気と、松友アナの滑舌の良い語りが心地よく、清涼感のある番組でリラックスして聴取出来た。長寿番組であるがゆえに根強いファンもいたと思う。
- 最終回は、選曲やコメント内容、編集をアナウンサー自身がこなして手作り感満載が良くわかり、番組内のコメントを聞いていると、パナソニックの製品作りと共通するものがあると、この番組が70年も続いてきた理由に得心した。
- ラジオといえば「歌のない歌謡曲」、「歌なし」といえば戒田さんという、県民のDNAに組み込まれているこの番組が終わる。あまりにも当たり前にあると思っていた番組が突然終了と言われて、本当にびっくりした。民間放送では最長寿番組で、5000回以上の放送にかかった広告料とはどのくらいなんだろうと思うと、もうそんな企業は今後出ないだろうとあらためて感心してしまった。
- パナソニックの社員の想いと番組スタッフの想い、そして長年聴き続けてきたリスナーの想い、という3つの想いでできた番組ではなかったかと思うほど、数ランクも上の品位ある番組だったと思う。こうした感謝の想いは、創業者・松下幸之助さんあってのものだから、この番組が作られたのかなとも想像できるし、アナログな私にとっては非常に寂しさを感じてしまった。
- 少なくとも70年前の段階でインストゥルメンタルという構成、そしてアナウンサーの声を音として捉え、ナレーションとのバランスを戦略的に一から作り上げた番組構成は結果として松下電器という会社のCM、特に松下幸之助氏が自社商品の技術やプロモーションで、国民に対して豊かな生活を提供する、という最終的な狙いを持って15分間の「歌のない歌謡曲」広告戦略は、世界レベルと捉えられるほどすごい企画だなと感じた。
- 9月22日放送分には、33年3か月も番組を担当した戒田節子さんが登場して、可愛らしくかつ非常にシャープな声で話され、最後に発した「皆様、今日も一日どうぞお元気でお過ごしください」という言葉は、ICレコーダーに録音して毎朝聴きたくなるような声だった。また、パナソニックの生CMも、製品を使う方のお役に立ちたいという気持ちが伝わってくるようで、とても新鮮なものだった。
以上
(番組審議会事務局)
番組審議会委員名簿
稲葉隆一(委員長) | 大一ガス(株) 代表取締役会長 |
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村田毅之(副委員長 | 松山大学 法学部教授 |
山田ひろみ | 陶芸家 |
徳田明仁 | 愛媛大学 ミュージアム准教授兼広報室副室長 |
近藤路子 | (株)フードスタイル 代表取締役 |
宇佐美まこと | 作家 |
長井基裕 | 愛媛新聞社取締役執行役員編集局長 |