番組審議会
番組審議会とは、南海放送が放送する番組の向上改善と適正を図るため、放送番組等の審議を行うことを目的として設置された審議機関です。
第731回 番組審議会
第731回番組審議会が、10月22日(水)本社8階役員会議室で開かれました。
7名の委員より、テレビ、ラジオそれぞれの合評番組について審議が行われ、テレビ番組では南海放送が制作した ドキュメント 十五彩景『青とぞ思ふ -戦後80年の俳句甲子園-』について、委員から次のような意見が出されました。
テレビ番組ドキュメント 十五彩景『青とぞ思ふ -戦後80年の俳句甲子園-』
放送日時:2025年9月28日(日)25:55~26:25(南海放送制作)
番組概略
高校生が言葉の力でぶつかり合う「俳句甲子園」。俳人・正岡子規を生んだ俳句の都・愛媛県松山市に、全国17都道府県から32チームが集い、句の完成度と鑑賞力を競う。地元代表・愛媛大学附属には俳句部がなく、甲子園を夢見る一人の女子高生がゼロからチームを立ち上げ奮闘する。この夏、初めて立つ全国の舞台に新風を巻き起こすのか。
今年で28回を数える大会で目を見張ったのは戦争を詠んだ句。
【青田波 特攻のモールス「ツー」】
【蔦蔓(つたかずら) このガマで何人死んだ】
戦後80年の節目に、薄れゆく記憶を高校生はどんな思いで紡ぐのか?教科書でしか知らない歴史、修学旅行でたどった戦跡、これから歩む未来への願い――。
戦後80年を"等身大の俳句"で見つめる。
各委員の意見
- 俳句甲子園を題材とした番組は、重いテーマ(戦争)に対し、解釈の多様性を受け入れる広い心を持って見ていく姿勢の大切だと思う。高校生が俳句をどう解釈するか、ディベートをどう捉えるかは難しいが、多様な考え方があることを示している。ただし、番組に映った坊っちゃん列車に「伊藤園」の大きなラッピング広告が入っていたのは、全国に放送される番組としては違和感を感じた。
- 番組は、戦後80年という節目に、高校生の俳句を通じて戦争を見つめるという制作意図どおりに内容を仕上げることができたと高く評価できる。冒頭の坊っちゃん列車の映像で愛媛・松山への臨場感が高まっていた。愛大附属の武田るいさんや、戦争句を詠んだ北山さんら才能ある仲間が登場したエピソードは、番組制作にとって大きなプラスの効果があった。
- 主役である愛大附属高校の武田るいさんの奮闘は分かりやすかったが、俳句甲子園のルールやディベート(対戦内容)の説明が不足しており、視聴者にとって分かりにくい点があった。冒頭に名古屋高校の日常シーンを置いたため、誰が主役なのか混乱した。全国大会では句の提出と順番が事前に決まっているという事実があるため、「この句に対しては違う句で対戦したら勝てたかも」といった戦略的な駆け引きを説明すれば、さらに面白くなっただろうと感じた。
- 重いテーマである「戦争」と「青春」という二軸を追いかけた結果、テーマが散漫になり中途半端になってしまった可能性がある。山口徳山高校の石松くんが自ら「回天」の発射基地を訪れ句を詠んだ場面は、番組がイメージした「戦争」の部分と重なり、説得力のある句として楠目ディレクターの意図が唯一マッチしていた。ナレーションが若々しいこともあり、重いテーマの切り取りが軽く見えたのが惜しい。
- 高校生が戦争句を「勝つための道具」として論破の競技に使う姿に強い違和感を抱き、清々しい気持ちで番組を見終えられなかった。高校生の「この句で絶対に勝てるよ」という発言は、彼女たちが俳句で勝つことに一生懸命であり、制作側の意図と高校生の現実の間に乖離が生じている。戦争に深く関心がない高校生の「リアルな距離感」を映しているとのディレクターの説明は理解できるが、個人的にはこの点が清々しさを感じさせなかった。
- 高校生と戦争の世代間ギャップを映し出すことは興味深いが、テーマが「青春」と「戦争」の二軸を追いかけたことで、内容がバラバラに散漫になってしまった。徳山高校の石松くんが自らの意志で回天の発射基地を訪れたことは、俳句が戦争を知るひとつの方法として良かった。タイトル「青とぞ思ふ」は兼題の「青田」から取ったのなら、タイトルを「青田とぞ思ふ」にした方が意味が通りやすいと思われる。
続いてラジオ番組は、南海放送が制作した 録音風物誌「ドンドコ響け!~竹太鼓村から広がる希望の竹~」の合評を行いました。委員の主な意見と感想は次のとおりです。
ラジオ番組録音風物誌「ドンドコ響け!~竹太鼓村から広がる希望の竹~」
放送日時:2025年9月10日(水)6:45~6:55(南海放送制作)
番組概略
「録音風物誌」とは
1953年(昭和28年)の放送開始から70年を超える長寿番組。全国AMラジオ34局が持ち回りで制作。日本各地の文化・風俗・暮らし・人間模様を"音"とともに紹介する番組です。
愛媛県松山市を代表する観光地・道後温泉。湯の町から車で10分ほど走った山あいに「かぐや姫太陽竹太鼓村」はあります。村を作ったのは、78歳 林薫さん。全国で問題となっている放置竹林――地域のお困りものである竹を、"豊かな資源"と考え活用しています。切り出した竹は、力強い音を響かせる竹太鼓に、また夏の風物詩・流しそうめんが流れるレールや器、お箸に。竹を使って人々を笑顔にしています。林村長のやさしい思いは村を越えて広がり、竹太鼓の輪は地域へとつながっています。
ラジオディレクター2年目の君岡きららが全国放送番組の制作に初挑戦しました。彼女が大学時代、地域活性化を学んでいた頃、山あいに暮らす方々との会話でよく耳にしたのが「竹のお困りごと」でした。「家の裏の竹林が家まで迫ってきよる」「竹がネットみたいに重なって、放置竹林に入るのもひと苦労」「線路まで竹が侵食しよる」そんな声を聞くたびに、竹は厄介者として扱われていることを実感しました。
しかし同時に、竹はかつて日本人の暮らしを支えてきた大切な資源でもあります。その価値を見直し、"希望ある資源"として生かそうと挑む林さん。「放置竹林を太鼓やそうめん流しへアップサイクルして、地域に笑顔を広げていく姿を、多くの方に伝えたい!」そんな思いからこの番組を制作しました。
各委員の意見
- 放置竹林という地域の困り事を有効活用し、地域を活性化する林村長の姿を気持ちよく描き出した素晴らしい番組である。林村長の活動を通じて、彼自身も大きな力をもらい生き生きとした人生を送っている様子が伝わってきた。番組から流れるセミの声や流しそうめんをすする音など、生活音の録音がクリアでリアルに聴こえ、情景が浮かぶようだった。
- 放置竹林問題という深刻なテーマに対し、優しく楽しく問題提起する姿勢は理解できるが、朝から結果を求めるリスナーにとっては「ふんわり」しすぎている印象だった。林村長が「竹は宝の山ですけど、疲れたらゴミの山に見える」と発言した点に、林さんの人間的な魅力が表れていると評価しつつも、太鼓やそうめん流しだけでは解決にならない深刻な問題の「芯の部分」まで踏み込んで伝えるべきだったのではないかと感じた。
- 音の演出は心地よかったが、番組タイトルが「ドンドコ響け!」であるにもかかわらず、竹太鼓の具体的な形状や製作過程の説明が不足しており、イメージがしにくかった。なり、真意が伝わりにくかった。孟宗竹を切り、乾燥させ、焼いてから太鼓にするという工程の説明は重要なポイントとして入れるべきだった。
- ラジオの特性上、10分間の放送を「聴取」しただけでは、番組の背景やメッセージが理解できなかった。テレビと異なり「ビジュアライジング」(視覚化)できないラジオでは、リスナーに認知をさせた上で理解を促し、「解釈」に至らせるため、音と構成によるさらなる工夫が必要である。文字上での企画と構成はよくできていたものの、一見しただけでは仕組みの全貌が分からず、メッセージが伝わりきらなかった。
以上
(番組審議会事務局)
番組審議会委員名簿
| 稲葉隆一(委員長) | 大一ガス(株) 代表取締役会長 |
|---|---|
| 村田毅之(副委員長 | 松山大学 法学部教授 |
| 山田ひろみ | 陶芸家 |
| 徳田明仁 | 愛媛大学 ミュージアム准教授兼広報室副室長 |
| 近藤路子 | (株)フードスタイル 代表取締役 |
| 宇佐美まこと | 作家 |
| 長井基裕 | 愛媛新聞社常務取締役常務執行役員 |