番組審議会
番組審議会とは、南海放送が放送する番組の向上改善と適正を図るため、放送番組等の審議を行うことを目的として設置された審議機関です。
第727回 番組審議会
第727回番組審議会が、5月27日(火)本社8階役員会議室で開かれました。
7名(内2名はレポート提出)の委員より、テレビの合評番組について審議が行われ、南海放送が制作した「NEWS CH.4 今治・西条山火事一連の報道」について、委員から次のような意見が出されました。
テレビ番組NEWS CH.4 今治・西条山火事一連の報道
2025年3月27日(木)18:15~19:00 「山火事5日目焼け跡で...待ちわびた雨」
2025年3月31日(月)18:15~19:00 「ようやく、鎮圧 その時住民は...」
2025年4月11日(金)18:15~19:00 藤井目線「山火事発生から半月 現場の今」
(南海放送制作)
番組概略
3月23日(日)に今治で発生した山火事。火は連日燃え広がり、今治・西条あわせて約481ヘクタール(5月14日最終報告)を焼き、山火事による飛び火で住宅や倉庫など27棟が被害を受けた。※3月31日 鎮圧 4月14日 鎮火。
NEWS CH.4では、出火当日から現場を取材。刻々と変化する火の勢い、被害の拡大、消防による懸命な消火活動、避難生活の様子。地元住民の表情を捉えながら、現地の今を、日々の変化に合わせながら放送。
鎮火(4月14日)前の4月11日には、2か月に一回NEWS CH.4に出演いただいている藤井貴彦キャスターが現地を取材。
発生から半月以上経った現場の状況、火事で被害を受けた住民などの心境の変化などを伝えた。
各委員の意見
- 様々な立場の被災者や消防士、消防団の消火活動、知事や市町の対応から、火災が長く続き被害規模が拡大した理由や山の再生に関する研究者による解説など、非常に多くの場面やエピソードを盛り込み、視聴者の関心が高い山火事について、ヘリコプターまで動員して丁寧に報道していた番組だった。
- 17年前にも火事になった笠松山で、10年かけて2500本のヤマザクラを植えて再生されていたところに今回の火事。不運続きの笠松山の再生には、これから20~25年かかると知り、気が遠くなるような時間と手間が必要なことに、甚大な被害の大きさを感じ取りました。(再生に尽力されていた造園業の越智さんのコメント)「悔しい、このままでは終われない」という言葉に、どん底の中にも希望を見出す人たちの力強さを感じさせてもらった気がした。
- 被害の実態、現場の状況、被災住民の声や避難所の様子など、また行政の対応、復旧に向けての課題について、取りこぼしの無い取材であったと思う。出火原因については、引き続き取材をお願いしたい。現場の映像、地図、住民の声を通して、今回の火災の特徴である飛び火の恐ろしさを的確に報じていたと感じている。「県が今治市と西条市に災害救助法を適用」と紹介されていたが、この法律によって何が実行されるのか、被災地にとってどんなメリットがあるのかを説明すべきだったのではなかったかと思う。
- 単に山火事とその被害を報じるだけでなく、人々の生活という目線で小さなエピソードを重ねて報道していたことは印象的だった。焼け落ちた家の中で飼い猫を探す女性、「家を守ってくれてありがとう」の手書きのポスターを掲げた家など。「降水量が少ない瀬戸内地方=木が育ちにくい=樹高が低い=樹冠に火が燃え移りやすい=飛び火が多くなる」という専門的な知識にも言及されており納得した。出火原因がうやむやになっているところは気になったが、報道機関としては消防や警察など公的機関に取材をして、「どうだったんですか、わからなかったんですか」とたずねたことを報道すること、噂が噂を呼ぶのを防ぐためにも、きちんと「原因はわからない」と伝えることも重要だと思った。
- やっと雨が降った日の中継では、動きの無い現場を背景にしていろんな言葉を選びながら落ち着いた語り口でレポートする和氣さんの様子が印象に残った。自宅の全焼や飼い猫の行方不明など普通ならインタビューに答えられない状況の方が出演されていたり、卒業式、入園式と重なる時期でもあり、幅広い市民の心情に気づかされる丁寧な構成だったと思う。地道な消火活動に同行した様子も、視聴者の不安の解消につながったように思う。
- 冒頭で「山火事から半月」とありながら、鎮圧宣言までの経緯、そして現在の鎮火状況が断片的に語られるため、時系列的な整理がもう少し明確だと視聴者はより状況を把握しやすかったかもしれない。藤井レポーターのレポートは共感的だが、「藤井目線」というタイトルを冠するのであれば、キャスター自身のより踏み込んだ考察や問題提起、地元のニュースではあまり取り上げられない独自の視点がもう少し打ち出されても良かったかもしれない。短い時間で多くの側面を伝えようとしているため、一つ一つの情報が表層的になっている部分も見受けられた。特定のテーマに焦点を絞るか、シリーズ化するなどして深堀りする構成も考えてはどうか。一連の報道については、山火事の深刻な被害と、それに向き合う人々の姿、そして長期的な課題を、取材と調査の可能な範囲でバランスよく伝えた質の高い報道であると感じた。
今回はラジオ番組の合評はありません。
以上
(番組審議会事務局)
番組審議会委員名簿
稲葉隆一(委員長) | 大一ガス(株) 代表取締役会長 |
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村田毅之(副委員長 | 松山大学 法学部教授 |
山田ひろみ | 陶芸家 |
徳田明仁 | 愛媛大学 ミュージアム准教授兼広報室副室長 |
近藤路子 | (株)フードスタイル 代表取締役 |
宇佐美まこと | 作家 |
長井基裕 | 愛媛新聞社常務取締役常務執行役員 |