番組審議会
番組審議会とは、南海放送が放送する番組の向上改善と適正を図るため、放送番組等の審議を行うことを目的として設置された審議機関です。
第739回 番組審議会
第739回番組審議会が、6月24日(水)本社8階役員会議室で開かれました。
7名の委員より、テレビ、ラジオそれぞれの合評番組について審議が行われ、テレビ番組では南海放送が制作した「十円易者と山頭火~村上桂山・人生訓~」について、委員から次のような意見が出されました。
テレビ番組「十円易者と山頭火~村上桂山・人生訓~」
放送日時:2026年5月30日(土)16:00~16:55(南海放送制作)
番組概略
村上桂山(むらかみ・けいざん)は昭和14年から昭和51年まで松山の繁華街で手相占いをしていた実在の人物です。見料はわずか十円。いつしか『十円易者』と呼ばれるようになり、当時の松山の人々に親しまれていました。街頭易者である彼のもとへ訪れる客は毎日数百人にのぼったという人気ぶり。村上桂山とはどんな人物、何故そんなに多くの客が押し寄せたのでしょうか。さらに人生を達観したかのような独創的な句も魅力の一つです。「死なざれば 生まれた事が ウソになる」。番組では自由律俳句の俳人・山頭火と俳句バトルを行うファンタジーな世界に誘います。昭和のあの頃、たった十円で得られた人生訓が松山の街角にありました。村上桂山(むらかみ・けいざん)は昭和14年から昭和51年まで松山の繁華街で手相占いをしていた実在の人物です。見料はわずか十円。いつしか『十円易者』と呼ばれるようになり、当時の松山の人々に親しまれていました。街頭易者である彼のもとへ訪れる客は毎日数百人にのぼったという人気ぶり。村上桂山とはどんな人物、何故そんなに多くの客が押し寄せたのでしょうか。さらに人生を達観したかのような独創的な句も魅力の一つです。「死なざれば 生まれた事が ウソになる」。番組では自由律俳句の俳人・山頭火と俳句バトルを行うファンタジーな世界に誘います。昭和のあの頃、たった十円で得られた人生訓が松山の街角にありました。
各委員の意見
- ラジオ版と比較して情報の伝達には優れているが、視聴者が抱く情緒的なイメージとの乖離がある。女性講釈師による案内や、実物の「書きつけ」を見られる点はテレビならではの利点だが、俳優の起用により自身が抱いていた桂山や山頭火のイメージと異なってしまい、情緒よりも知識が中心に残る内容に感じた。音だけのラジオの方が人物描写に適している面もあるが、より多くの人が視聴できるテレビでの挑戦自体は評価したい。
- 番組が描く戦争パートの重みが、現代にも通じる深いメッセージ性を持っている。桂山が戦時中に若者の背中を押してしまったことへの悔恨や、戦争という狂気の恐ろしさが描かれている点に強く共感した。一方で、主人公が易者の道に進んだ理由などの背景説明が不足している点や、配役・メーキャップにおいて登場人物の年齢感に違和感がある点は、より丁寧な検討が必要だと感じた。一部で説明不足や配役への違和感を感じたものの、戦争という狂気が人々の思想を形作る過程を掘り下げた点は、現代社会への強い警告になっていると思う。
- 演出手法である「動く紙芝居」という試みは、言葉の力を際立たせる効果的な表現である。背景に写真や合成を用いる手法には当初戸惑ったが、役者の演技と言葉に集中させる意図を理解すると納得でき、特に主演の演技は山頭火との掛け合いを含め圧巻であった。ただし、一部のセットの質感が不十分に見えた点は改善の余地があると感じたものの、自然体で生きるコツを教わるような良質なドラマであった。セットの質感に物足りなさを感じた部分はあったものの、あえて合成感を出して言葉と演技を主役にした演出手法は、作品の魅力を引き出すのに成功していると思う。
- アーカイブ映像や丁寧な演出の積み重ねが、低予算ながらも作品に深い説得力と完成度を与えている。昭和50年前後の実際のフィルム映像を背景に使用するなどの工夫により、地元視聴者を釘付けにするリアリティが生まれている。また、脇役の秀逸な演技や時代考証に基づいた小道具が作品の深みを支えており、戦争の描写から晴れやかな結末に至るまでのトーンのバランスも見事であった。昭和50年前後の実際のフィルム映像を背景に使用するなどの工夫により、地元視聴者を釘付けにするリアリティが生まれている。また、脇役の秀逸な演技や時代考証に基づいた小道具が作品の深みを支えており、戦争の描写から晴れやかな結末に至るまでのトーンのバランスも見事であった。
- ラジオで確立された世界観をテレビという異なる媒体で再構築する際の、映像表現としての技術的な挑戦と期待される。すでに物語が完成されているだけに、テレビ俳優ではない舞台俳優の起用や対話型の画角といった実験的な試みが、視聴者にどう響くかが鍵となる。演出が凝ることで史実が霞む懸念もあるが、視覚と音声を組み合わせた新しいエンターテインメントとしての次なるステージを期待したい。演出の深化が史実を曖昧にする可能性はあるものの、既存の優れた物語を新しい視覚的エンターテインメントへ昇華させようとする実験的な試みだと思う。
- 構成の妙により、対照的な二人の人物像と人間の深層心理が鮮やかに描き出されている。漂泊の「動」と定住の「静」という二人の対比や、軽妙な会話劇が秀逸であり、特に桂山の心の奥にある戦争への悔恨を描いた点は非常に人間味があり引き込まれた。セットについては、コンセプトに合わせて背景を書き割りのような絵にするなど、より徹底した作り込みをしても良かったのではないかと感じた。セットの造形に一工夫あっても良かったと感じたものの、二人の対照的な生き様と重い過去を抱えた人間ドラマを巧みに構成した点は、非常に秀逸な出来栄えだったと思う。
続いてラジオ番組は、南海放送が制作した「しあわせの音がするお好み焼き」の合評を行いました。委員の主な意見と感想は次のとおりです。
ラジオ番組「しあわせの音がするお好み焼き」
放送日時:2026年5月30日(土)21:00~21:55(南海放送制作)
番組概略
この番組の舞台は小さな港町、今治市大浜1丁目にある一軒のお好み焼屋の主、桧垣瑞穂さん通称「ミーコちゃん」を中心とした「ご近所さん」という小さなコミュニティです。大きな事件は起きません。そこでは、「人」が生き、「つながって」 いるだけ。しかし、「全てを疑い、分断する時代」だからこそ、この小さな「つながり」は不思議な輝きを放っているのです。小さいけれど本当に大切な何かが見えるのでは・・・
20年前、小さなコミュニティーの定点観測が始まりました。20年の間には思いもよらぬ出来事が起きました。道路拡張のために住民の立ち退きが決まり、主人公を拠り所としていた94歳の「味岡のおいさん」が心ならずも、大阪の娘にひきとられ大浜を去りました。そして大きな道が出来た1丁目・・・。残ったご近所さんはわずか。それは日本の片隅で起きている普通の人々の"現実"です。その20年を、一丁目の野良猫(メス)が語ることにしました。猫目線で一丁目の人々の日々はどう映るのか。
ミーコちゃん、味岡のおいさん、犬のみっちゃん、ネコ大好きフミちゃん・・・個性豊かな登場人物の会話劇と共に気楽に楽しんで頂けたらと思います。人生は生きづらくて、あたたかい。人生は生きづらくて、愛おしい。それが一丁目の人々の営みです。ミーコちゃんは言います「みんな、家族や」。
各委員の意見
- 20年にわたる取材音源の積み重ねが、ラジオという媒体を通じて視聴者の想像力を刺激し、地域の温かさを鮮やかに再現している。元気な笑い声や調理の音、周囲の喧騒が無数に登場することで、かつてのテレビ番組を知る者にはその姿が目に浮かび、知らない者にも場所の熱気が伝わってくる。一方で、一部の挿入歌が場面にそぐわないと感じた点はあるが、エンディングに至る音の構成は見事であり、地域の人々の幸せを自然に映し出している。
- 20年間の定点観測によって描かれた地域コミュニティの実像が、映像のないラジオだからこそ深い表現力を持って伝わっている。今治の方言で語られる人々の日常は、日本の田舎に共通する群像劇のようであり、時の移ろいを音声で表現した手法に奥深さを感じた。登場人物のその後や家族関係など、より踏み込んだ取材内容を知りたいという思いはあるが、猫を狂言回しに据えた構成や、効果的な環境音の活用が番組の質を高めている。取材対象の背景をもっと深く知りたいと感じた部分はあったが、映像がないからこその音声表現が、地方コミュニティの現実と温かさを読書のような感覚で伝えていると感じた。
- 平凡な日常に宿る幸せを、音とナレーション、そして「間」の絶妙な組み合わせによって上質な物語へと昇華させている。調理の音や笑い声が最高のBGMとなっており、ラジオならではの音へのこだわりが、テレビ取材では知り得なかった主人公の新たな一面を引き出している。誰もが人生の主人公であり、同時に誰かの脇役でもあるという人との繋がりを感じさせる構成は、日常の中に物語があることを教えてくれる。音へのこだわりが存分に発揮された演出により、何気ない日常の中に宿る「人生の物語」が、キラキラとした輝きを持って心に染み入るように感じた。
- 客観的な視点を持つ猫のナレーションが、方言の強いリアルな会話と対比されることで、作品に深いメッセージ性を与えている。地域猫が標準語で語る設定は、最初は違和感があったが、聴き進めるうちに人々のベタベタの方言をすっきりとまとめ上げる効果的な対比だと納得できた。特に「人間は一人じゃない」という猫の独白は強く心に響き、鉄板の「ジュージュー」という音とともに、幸福感と切なさが同居する見事な演出であった。最初はナレーションの言葉遣いに戸惑いを感じたが、猫という傍観者の視点を介することで、人々の強い繋がりと「幸せな音」がより鮮明に浮き彫りになっていると感じた。
- 音声と情報の解像度が極めて高く、リスナーが向き合わざるを得ないほどのリアリティとメッセージ性を備えた作品である。最初は流し聴きをしようとしたが、あまりの解像度の高さに母の記憶が呼び起こされ、真剣に向き合わざるを得なくなった。制作者のフィルターを通した「幸せ」への問いかけは、コミュニティだからこそ吐き出せる本音までをも描き切っており、音だけだからこそ成立する力強い表現になっている。作品の持つリアリティがあまりに強烈でしんどさを感じた瞬間もあったが、音と言葉だけで構築された世界が「幸せの本質」を鋭く突きつけてくると感じた。
- 分断が進む現代において、調理音や会話といった「音」がもたらす日常の尊さが、猫の語りによって秀逸に描かれている。大きな事件は起きないが、今日と同じ明日が来ることの尊さが、調理の音や方言混じりの会話を通じて丁寧に表現されている。方言を無理に標準語に訳さず、雰囲気を重視した点も想像力を刺激して良いが、一部の重厚な挿入歌については、作品の素朴な内容との調和をより検討しても良かったのではないか。一部の音楽に仰々しさを感じた面もあったが、調理音やあえて残された方言が、分断された世界の中で光を放つ日常の尊さを雄弁に物語っていると感じた。
以上
(番組審議会事務局)
番組審議会委員名簿
| 稲葉隆一(委員長) | 大一ガス(株) 代表取締役会長 |
|---|---|
| 村田毅之(副委員長 | 松山大学 法学部教授 |
| 山田ひろみ | 陶芸家 |
| 徳田明仁 | 愛媛大学 ミュージアム准教授兼広報室副室長 |
| 近藤路子 | (株)フードスタイル 代表取締役 |
| 宇佐美まこと | 作家 |
| 長井基裕 | 愛媛新聞社常務取締役常務執行役員 |