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【南海放送ラジオ】放送日時:2018年10月7日(日)AM 9:30~12:00

ラジコのタイムフリーで10月14日まで聞けます
radiko タイムフリー

南海放送と山下達郎さんが同い年の縁もあり初コラボが実現!
10月9日(火)17:30開場 18:30開演で
『南海放送開局65年 山下達郎 PERFORMANCE2018』が開催されます。

南海放送ラジオではこのコンサートに行ける人も惜しくもいけない人もファンの人もそうでない人も?一緒に気分を盛り上げようということで10月7日(日)午前9時30分~12時まで達郎特番を緊急編成!題して・・・『開局65年南海放送 山下達郎SP ON THE RNB CORNER』番組ではリクエストはもちろん、達郎ソングの思い出を募集。さらに本人との貴重なインタビューや南海放送のアナウンサーやプレゼンター出演による達郎ソングにちなんだオリジナルショートドラマなども!

お聞き逃しの無いように!

オリジナルショートドラマの台本を公開!

① My Sugar Babe

男:白石紘一  男B:古谷崇洋  ユキ:竹内愛希

*カフェで先輩(男)が後輩(男)の相談にのっている

男:「はやく忘れたほうが良いんじゃないか、そんな女性。大体元カノを引き摺るなんてありえないぞ笑オレだったら無理だなあ、そういうの絶対ムリ!」
(*ちょっと無理した感じで)

男(心の声):嘘だった。今着ている紺のジャケットの胸にさしている紫のチーフ。初めて二人で行ったハワイでユキと一緒に買ったものだ。お揃いは恥ずかしいと嫌がる僕にじゃああなたにはチーフで、私はストールだったらいいでしょと半ば無理やりお揃いにしたものだ。それ以来記念日には必ずチーフとストールをつけてデートをした。でもそれが出来たのは...3回だけ。いや2回だっけ?3回目の時は確かユキがストールを忘れてきて...いやそれとも僕がチーフをだっけ...?

男B:「ちょっと先輩!聞いてますか?あ、今、ボーっとしてたでしょ?」
   「だって既読スルーならまだいいほう、最近は未読のまんまっスよ。ホント、ありえないっスから!」

男:「おいおい。もうやめたほうがいいんじゃないか。いつまでも過去の女性に縛られるほど無駄なことはない。そんなことしてる間にイイ女がいなくなっちゃうぞ。ほらここのコナコーヒー、本場のハワイとおんなじ香りがしていけるんだ。飲んだらヤなこともすっかり忘れるさ。」

男B:「は?オレコーヒーとかよくわかんないッスよ。それに飲んだらゼンゼン寝れなくなっちゃうし。あ~もう!イライラが止まんない。にしてもなんでアイツは連絡をしてこないんだ!?」

男(心の声):人の事だと言えちゃうんだよな。男は直線の道だから過去の恋を振り返って、女は角を曲がるから前の恋を振り返らないって言ったのって絶対男だよな。だって僕は今でもこうしてユキが去ったカフェに来てる。

(ピコーン♪LINE着信の音)

男B:「あー!やっと来た!ミナ!今から会いたいって。何なんだよ!2日ぶりに連絡してきたかと思ったら、いきなり会いたいって」

男:「えっ、2日...」

男B:「あ、先輩じゃあ私行ってきます。ミナ、すぐ近くにいるみたいなんで。ご馳走様です!また相談乗ってください~。失礼しま~す」

男:「お、おい...ちょっと...行っちゃった...まあいいか...まったく最近の若い男はどうしたもんかねえ...だらしがないというかなんというか...」

(カランコロン♪カフェの入り口の音 ちょっと遠い感じで)

男B:「あ、ちょっとごめんなさい。急いでるんで!どいて!」

ユキ:「あ、スイマセン」

男(心の声):その時、紫のストールをしているユキが入れ違いで入ってきたと僕が気付くのは、もう少し後の事だった。

♪【My Sugar Babe】
Written by  HAKUYO ESASHI

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② 君の声に恋してる

ユキ:星加奈緒  男:古谷崇洋

*恋人同士の二人、彼の部屋で

ユキ:「ねえ。カンロ飴ってさ、発売当初から小さくなってると思う?」

男:「う?...う~ん」

ユキ:「実は六十年間、同じサイズなんだって!私絶対小さくなってると思ってた。ほら、ホームページに書いてるよ。"その質問はよくいただきますが発売当初から味もサイズも変わっておりません。小さく感じたのはあなたが成長したからですよ"だってー!いい話じゃない??泣ける~」

男:「う、う~ん」

ユキ:「なに、その反応~。メチャクチャいい話でしょ?飴が小さくなったんじゃなく君が大きくなったんですよって。この広報さんサイコー!ねえ、ちょっと意味わかってんの?」

男(心の声):さっきから君は左手にサーティーワンのダブルコーン、しかもスモールじゃなくレギュラーのヤツを頬張りながら、右手で器用にスマホをフリックしている。画面の中でお気に入りのネタが見つかるたびに僕に報告してくれている。

ユキ:「あ、しかもカンロ飴ってアメンボと同じ匂いがするんだって!凄くない?!何でだろ??」

男:「へえ...」

ユキ:「へえってリアクション薄いな~」
 「へえとかふ~んとか!もう怒ったぞ(怒ってない声で)。じゃあ、これはちゃんと答えないともうお話ししてあげませんからね。じゃあね行くよ...じゃあ...私の好きな所ってどこ?」

男:「え?!ああ...」

ユキ:「ああじゃないでしょ!?どこなの私の好きなとこは?」

男(心の声):ちょ、ちょっと近い。近いよ、その距離

ユキ:「何?何モゴモゴ言ってるの?聞こえないじゃん!」

男:「な、何でいきなりそういう系の質問?」

ユキ:「だってさっきから私ばっかりしゃべってるじゃん!」

男(心の声):ほら。また近づいてる。うわっ、こんな近くで見たのは初めてだ。近くで見ても...可愛い...。でも僕が一番最初に好きになったのはハーフに見える顔立ちじゃないんだ。僕が一番最初に好きになったのは...君の...そう確か初めて出会った時からそうだったんだ。

(昔を思い出す、人気のカフェで)

ユキ:「ここいいですか?」

男:「は、はい?」

ユキ:「いや、他の席全部埋まっちゃってるんで。ここいいですか?って聞いたんですけど」

男:「あ、はい...いいですけど」

男(心の声):イヤホンをしてずっと本を読むことに集中していたので気がつかなかった。店内はいつのまにかたくさんの人で満席になっていた。

ユキ:「ユキって言います」

男:「はい?」

ユキ:「私の名前。ユキって言います。初対面で自己紹介するのは当たり前でしょ?ここのコナコーヒーって本場の香りがして美味しんでしょ。私一度来てみたかったんだ。何読んでたの?『六機の護衛戦闘機』?ずいぶん古い本読んでるのねw」

男(心の声):白状すると僕はその時にもう恋に落ちていた。僕が最初に惚れたのはユキの...声だった。小さくもなく大きくもなく。囁いているようで芯の通ったその声。まるで見えない腕でそっと抱きしめられるようだ。さっきまで聞いていたラスカルズのブルーアイドソウルな歌声もすっかり忘れるくらいのそれはもう綺麗な声。それからなんだ。君の声を聞きたいからという理由で相槌ばかりを打つようになったのは。

ユキ:「男の人に声かけるの初めてだったけど知ってる人に似てたから大丈夫だと思って」

男:「...それって恋人?」

ユキ:「...そう」

男:「ウソでしょ」

ユキ:「そうウソ笑」

♪【君の声に恋してる】
Written by  HAKUYO ESASHI

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③ ゲットバックインラブ

男:松岡宏忠  マリエ:西木恵美里

男:坂の上にあるいつものスーパーマーケットに行った帰りの事だった。彼らしき人と連れ立って君は横断歩道の向こう側に立っていた。突然の再会に一人で焦ったけれど、初夏の日差しを背に受けたこちら側は逆光になっていてどうやら君は僕には気づいていないようだった。

腰あたりまであった長い髪は肩の上までに揃えられていた。変わっていたのはそれくらいで、スラリとした長身でさらに背筋を伸ばして胸を張って立つ癖と品の良さがにじみ出る薄い唇はあの頃のままだった。さらにマリエだと確信出来たのは眉間のしわのせいだった。眩しい時や困ったとき、眉をひそめるとくっきりと浮き上がる小さなライン。こんなに離れていても直ぐに見分けられた自分に余計テンパってしまった。

美しい顔立ちとは不釣り合いな眉間の小さな渓谷。それは彼女がいつも嫌がっていたもので、僕が一番好きなパーツだった。信号待ちの間中、マリエは右手を目の上にかざして少し目を細めている。始めは誰もいなかったのに少しずつ信号待ちの人が増えてきた。向こう側にいるマリエは並んで待つ数人の中で跳びぬけて姿勢が良いため、何か一人だけ敬礼をしているようで僕は気づかれないように小さく笑った。

信号が変わる時間を知らせる歩行者用の棒グラフはまだほとんどが点いたままだ。その間を利用して僕は出来るだけたくさんマリエとの日々を思い出すことにした。彼女と別れて2年半が経っていた。最後は僕の方から言ったけれど傷つかないように別れの言葉をうまく引き出したのは彼女の方だった。ユキと喧嘩別れして半年ほど経った時にマリエに出会った。別れた理由も付き合ったきっかけも上手く説明できない。ただ毎日していた電話がLINEに変わり直ぐに返信していたメッセージもその日中になり、次の日になり...そのうち返すことが無くなっていった。

マリエ:「私は貴方のこと今でも好きだけど貴方はそれほどあたしを好きじゃないんだよ。そういうのわかっちゃうし、辛いの」

男:よくある恋の終わりだとわかっているけれど今でも忘れることが出来ないでいた。丁度、この信号機の棒グラフのように二人の気持ちが一段階ずつ減っていくのが見えていたのにお互い何もしなかった。好きな気持ちを残したままサヨナラをした僕は次の恋に進めないままずっとその場に踏みとどまっていた。

マリエ:「不満も満足も連続使用すれば平面的に日常に風化するのよ」

男:最後の会話をした時、テーブルの向こうでいった君の言葉。言い返す言葉が思いつかなくて見たくもないのに薄明りのガラス窓を見た。いつの間にか降っていた雨のひとすじが浮かんでいたのを今でも思い出せる。遠い記憶の中で君との思い出は輪郭を失っていないことに自分で驚いた。僕は まだ 君を...

ふと見上げると信号機の棒グラフはまだ半分を過ぎたところだった。信号待ちに並ぶ人が増えてきた気配が背中から伝わってくる。君の側もそう。あ、君が彼の方を向いて軽く頷いた。今でも左側に立つ方が気に入ってるんだね。危ないから右においでと僕が言ったら

マリエ:「あんまり優しすぎるのは...嫌なの」ってちょっと怒ってたね。

男:あれから僕は一人になっても上手くやっている。1か月に一度は歯ブラシを買い替えるようになったし蝶々結びだってちゃんと出来る。君と選んだ緑色の自転車も今はほとんど乗ることが無い。あ、今度の春には会社を辞めてフリーのライターとして独り立ちするんだ。最初のテーマは決まってる。この街の歴史を書こうと思う。戦時中の話で撃墜王と言われた戦闘機乗りに紫のマフラーを送った松山の女性の話。そしてあの部屋はもう引っ越してしまった。住む町も変えたんだ。そして...そして...あとは何だっけ?あれから君にまだ言っていない事は...

長い信号待ちの間、僕だけがする一方通行の近況報告が終わりかけた時、ようやく信号が青に変わった。出だしで躓きかけたので横一列に並んだ人から一歩遅れてスタートしたけれど僕はいつもの様に歩き出すことが出来たしあの頃、君によく注意された猫背な歩き方も治ってる。僕はもう一人で大丈夫。僕の信号はもう青色に変わってる。

それでも君とすれ違うまでのわずか数メートルがとても長く感じたのでやっぱり気づかないふりで君をやり過ごそうと決めた時、ゼブラの丁度真ん中で君がこちらを見て少し頷いた。君も気づいてたの...?待って。僕は まだ 君を...

横断歩道を待つ間は長いのに渡りきるのはいつもあっという間だ。歩行者用信号の棒グラフが再び灯る直前、君が振り返ったかどうかをどうしても確かめたくて僕はゆっくりと振り返った。

♪【ゲットバックインラブ】
Written by  HAKUYO ESASHI

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④ 僕らの夏の夢

隊員A:中井ちゅうや  隊員B:ひめさぶろう
杉田庄一:和氣孝治  女将(今井琴子):清家夕貴
ユキ:森本晴香  男:鳥生洋文

(戦時中、松山の町を歩く兵隊数人)

隊員A:「杉さん、やっぱり新しい紫電は凄いですね!」

隊員B:「これでグラマンにも勝てる!ゼロ戦の仇を討ってくれる。それに我らが空戦の神、杉田庄一様がいりゃあ日本の逆転勝利は間違いない。昨日もあっという間に敵機5機も撃ち落としたんだからなあ」

杉田庄一:「弾が残ってれりゃあもっと撃ち落とせたけどな。まあ、昨日の話はそのくらいでいいだろ。それよりも今日は松山着任以来、初の外出許可をもらったんだ訓練ばっかりしてきたんだ。今日くらいは大街道で上手いもの食べようぜ」

隊員A:「そうだな。と言ってもこの町で、上手いもんを出してくれそうな店なんてほとんどないよな...」

杉田:「しょうがないだろ。戦争中だからな。はやくこんな戦いは終わらせて美味いものが食える平和な時代にしたいよな。お、こんなところに食堂があるじゃないか。ここならなにかあるだろう。入ろうぜ」

(ガラガラガラ...)

隊員A:「邪魔するよ~、誰かいるのかい?こっちは腹が減ってヘトヘトなんだ。なんでもいいから食うもの出してくれ~」

女将(今井琴子):「あら、これは兵隊さん。その恰好はもしかして海軍航空隊の人?昨日は凄い活躍やったそうで。松山基地の兵隊さんやったら何でも食べてほしいんやけど今はご覧のとおりお出しするもんが何もないんです」

隊員B:「なんだよ女将、それじゃあ店出してる意味がねえじゃねえか!なんでもいいから出してくれよ!」

杉田:「まあまあ、いいじゃねえか。無いものはしょうがねえだろう。そんなこともあろうかとホラ、弁当持ってきたんだ。女将、お茶だけでも出してくれ」

琴子:「スイマセン。今は出せるお茶もなくってお湯だけなんです。それでもここで休んでくれる人がいるんで暖簾だけは出すようにしてるんです」

杉田:「へえそうかい。じゃあ俺たちもちょくちょく寄させてもらおうかな」

琴子:「はい。何時でも来てください。へんなとこいって遊ぶくらいならここでゆっくりしていったらいいわ」

杉田:「そいつはいいや。遊ぶ金なんか元々ねえし、こっちの畳で...あーー気持ちいい!ゆっくりさせてもらう方がいくらか気が休まるってもんだ...ファ~アと...ムニャムニャ...」

隊員A:「おい杉さんもう寝ちゃったよ。闘魂の塊も地上に下りればいつもニッコリ、普通の兄ちゃんだな。余程疲れてるんだろ、女将俺も一眠りさせてもらうよーっと!」

(♪「僕らの夏の夢」イントロ~1コーラス)

(ガラガラガラ...)

杉田:「コトちゃん~今日も勝手に上がらせてもらうよ~」

女将:「あら杉さん、どうぞ。最近は杉さんのお蔭で松山基地の皆もようきてくれて。出すもんなんもないのに。でも皆が来てくれるようになってからなんかこの大街道も少し明るくなった気がするんよ。ありがたいことやわ」

杉田:「いやあこっちこそ。なんかここに来ると新潟の田舎に帰った気がするんだ。空の上も嫌いじゃないが気が休まらない。ここにはヘルキャットはいない。ホントの羽を伸ばせるってわけだ」

琴子:「...ところで他の兵隊さんから聞いたんやけど。杉さん、あなた辛いことがあって死に急ごうとしてるって...そんなことしたらだめよ。戦争が終わってこの店が再開したら真っ先にアナタにお腹いっぱい食べて欲しいんだから」

杉田:「ハハハ。誰がそんな事を言ったんだ。三四三航空隊にはお喋りな飛行機乗りが多いな。 死んだりはしませんよ。雲の上ではいつもニッコリ。ニッコリ笑えば必ず墜す!ですから。ハハッハハ」

(♪2コーラス目)

(松山の飛行場に駆け付けた女将、各機が出動準備をしている)

琴子:「庄一さん!庄一さん!」

杉田:「琴子さん!どうしたんだこんなところまで?」

琴子:「さっきお店に来ていた兵隊さんに聞いたら庄一さんが鹿児島に行くことになったって」

杉田:「そうなんだ。昨夜、急きょ鹿屋の基地に移るよう言われたんだ。準備に追われて知らせに行く余裕もなかった。落ち着いたら向こうから手紙を出そうと思っていたんだ。申し訳ない。」

琴子:「そんなことはいいの。それより...これ...持って行って欲しいの。」

杉田:「これは...?」

琴子:「マフラー。飛行機乗りの兵隊さんは白いマフラーが多いけど庄一さんは紫電改乗りやけん紫にしたんよ。高校の生徒らにも手伝ってもらって皆のぶんもつくったけん。ほら!」

杉田:「こ、こんなに...ありがとう。大切に使わせてもらうよ。...じゃあそろそろ行かないと」

琴子:「うん、気を付けて。...絶対死んだらいかんけんね!絶対。死んだら...死んだら私が許さんけんね」

杉田:「そんな、琴子さん...いつも琴子さんは困ったことがあると眉間にしわが出来るね。小さな渓谷みたいで僕は好きだったな」

琴子:「なんなのこんな時にもう!ふざけてばっかり」

杉田:「大丈夫...僕は死なないよ。だからそんな顔は止めてくれないか。いつも言ってるだろ。いつもニッコリ...ニッコリ笑えば二人:「必ず墜す!...ハハッハ」

杉田:「じゃあ...行ってきます。琴子さんもお元気で」

琴子:「庄一さんも...約束よ...」

(「雲に描いた~」からCI、曲のラストで現代に戻る)

ユキ:「...その後鹿屋基地に移った杉田庄一は1945年4月15日、グラマンF6Fヘルキャット数機の来襲を受け戦死する。まだ21歳の若さであった。大街道の定食屋だった今井琴子と済美高生らがその時作った『紫のマフラー』は計38枚。そのうちの1枚は日本に唯一現存する紫電改と共に南宇和郡愛南町の『紫電改展示館』に今も展示されている...か。へえ、上手く書けてるじゃん」

男:「ありがとう。お世辞でも嬉しいよ。初めてにしては上出来だと編集部も言ってくれたよ。全てが肯定できるわけじゃないけど変わらないものがあるよね」

ユキ:「...ねえ、やっぱり琴子さんは庄一さんの事が好きだったのかな」

男:「どうだろうね...」

ユキ:「絶対好きだったと思うよ」

男:「そうだね」

ユキ:「...そう信じる。私にはわかる。私には見えるんだ...」

男:「うん...僕もそう思う」

(♪サビからリフレインで入ってエンドまで)

Written by  HAKUYO ESASHI

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⑤ 潮騒

妻(ユキ):佐伯りさ  夫:江刺伯洋

*娘の披露宴の後、夜の海辺で話すベテラン夫婦
 (潮騒と海猫の鳴き声がする)

妻:「(ちょっと笑いながら)結局、一度もあなたから話しかけなかったわね、ユウトさんにw。」

夫:「え?...そうだっけ?」

妻:「そうだっけじゃないわよ、もう呆れた。レナはもう貴方のものじゃないの、ユウトさんのものなのよ。何度言わせるの?」

夫:「わかってるよ」

妻:「じゃあ、もうちょっと優しくしてあげてもいいんじゃない?...まだ許してないの?」

夫:「え、いや...別に...」

妻:「ウソw」

夫(心の声):娘レナの披露宴が無事終わったのは今から3時間前の事だ。初めて体験する我が子の結婚式とはいったいどんなものなのかと一人構えていたが、何かと忙しいのは本人達だけ。数か月前に結婚の報告を受けたと思ったら当日まであっという間。今日は今日で式の前に知ってる親戚と知らない親戚たちとの自己紹介をしあって、これまた知ってる人たちと知らない人たちが座る各テーブルに合格点ギリギリの愛想のいい笑顔でビールをついで回り後は娘たちの横にちょこんと立っていたらいつの間にかウェディング・パーティは終わっていた。特に花嫁の父なんてのは代表挨拶をするわけでもなくすることはほとんどない。見た目以上に気合を入れて臨んだつもりだが、なんだかただのお飾りのようで拍子抜けしてしまった。数百人の出席者の中で唯一悲しいのは自分だけなんだと改めて実感しさらに落ち込んでいると見かねた妻がホテルの傍にあるプライベートビーチに僕を誘い出した。夜の海は風が冷たく、蝶ネクタイをほどくと首筋の汗を潮風が拭きとってくれた

妻:「そのタキシードだってそうでしょ。ユウトさんが言ったことに何でもかんでも反対して。なんで花嫁の親がタキシードとドレスで花婿の親がモーニングと留袖なのよ。一緒にしましょうって向こうからも言われてたじゃない」

夫:「いや、これは...俺なりにどうしても譲れないことで...」

妻:「ハイハイ、貴方はレナが大好きですもんね。何かとユウトさんに意地悪したくなるんでしょw。 ...キャッ、まだ海の水は冷たいのね」

夫(心の声):ヒールを脱いだ素足の君が波打ち際で泡と戯れている。紫のストールが海風に持っていかれそうだ。僕がレナの披露宴でタキシードに拘ったのはユウト君への意地悪じゃないってことは君が一番分かってるはず。30年近く前の僕たちの時もそうだった。君のお義父さんと僕とは最初から上手く行ってたわけじゃなかった。物書きのような先のわからない不安定な者にウチの娘はやれないって。最後まで反対してたのは君のお義父さんだった。その後、一緒になることを何とか許してもらったけれど僕たちの披露宴で向こうから話をしてくれることはなかった。その時に君のお義父さんが着ていたのがこのタキシードだったんだ。映画でマーロン・ブランドが着てたようなブラックタキシードじゃなきゃ俺は絶対に出席しない!っていきなりお義父さんに脅されて。披露宴まで日にちもないし、じゃあレンタルでって言ったら貸してくれる所も無くて10件近くまわってようやく見つけたっけw。あれからもう26年か...。

妻:「あ、オリオン座が見えるよ!まだはやくない?あの星、そうだよね?で、赤いのは...ベテルギウス...だっけ。...星が赤く見えるのは消滅しそうだからって知ってた?でも本当に消えちゃったとしてもそれは何百年も前のことでしょ。確か640年?じゃあ、今見えてるのは640年前の光なんだよね。不思議だね。...26年か...あっという間だったねw」

夫(心の声):君も同じことを考えていたと思うとたまらなくいとおしくなった。君はわかっているんだろ。僕が披露宴で娘婿に話しかけなかった事とこのブラックタキシードに拘ったのは愛する二人が上手く行くための花嫁の父からのラッキーチャームだってことを。

妻:「あ、そうだ。あの光にお願いしよう...あの子たちがずーっと上手く行きますように...」

夫:「きっと上手く行くよ。君のお義父さんから教わったよく効くおまじないをかけておいたから。それと...この胸ポケットにも・・・」

妻:「そうねw。...あ、ちょっと何するの?」

夫(心の声):妻の指は海風ですっかり冷たくなっていた。星影の中、手を繋いだ二人は星座に近づくように南へ南へと歩いて行った。

♪【潮騒】
Written by  HAKUYO ESASHI

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